- ちゅうぶの日常
- 2021.03.24 (水)
- [ 生活介護/赤おに・青おに/ 相談支援/ナビ/ 自立生活 ]
エンパワメントを進めよう座談会
ちゅうぶは、ILPに力を入れています。通所支援員と相談支援担当者が障害者のエンパワメントについて、語り合いました。
小坪 ナビとして、委託相談、計画相談、地域自立支援協議会などに追われて、2019年度は自立生活プログラム(ILP)にあまり力量を割けなかった反省から原点に立ち返り、改めて力を入れたいというのが始まりで、通所も自立がスローガンだったので、なにか一緒に活動できないか考え、20年9月から取り組みを始めました。
夜遊び おにわナイトクラブで出会いが生まれた
濱田 遊ぶ経験が大事やなって、夜遊びナイトクラブを11月に企画した。自立障害者と若い障害者が10人ぐらい集まって、Aさん特性のカレーを食べて、Bさんに占いしてもらったりして、ドキドキする交流をした。C君が東さんの若い介助者に大興奮。若い障害者に大好評の企画だった。
松倉 DさんとE君が夜の道を一緒に帰宅した。それから二人が一緒に活動するようになった。Dさんが、最近、E君にイラストレーターを教えている。
濱田 ちゅうぶでも、ナビと通所が話し合えるいい機会になった。
東 F君も筋ジスの他の障害者と出会う機会がこれまでなかったが、筋ジスで自立を目指す他のメンバーと話ができてよかった。
小坪 毎月したいという声があったが、コロナが厳しくなって、企画はすべて中止となった。
東 すでに自立している障害者が若い障害者に関わってほしいが、どう関わったらいいかわからんという声もあるので、職員がフォローする必要があると思っている。
小坪 気持ちは、みんな持ってくれているけど、年齢も趣味も違うし何をしゃべればいいかということもあるので、どう関わってもらうか工夫が必要。
自立の前に、エンパワメントを目標にする 環境調整によるエンパワメント
辻谷 自立取り組みをすればすぐに、一人暮らしできるわけでもなく、ヘルパーを使うなど経験が必要。いきなり一人暮らしという目標は敷居が高い。まず、目標をエンパワメントにしたい。障害者がアイデアを出して、一緒に行動する。外出もする。
濱田 環境を整えないと、やりたい気持ちも出てこない。例えば、Gさんが「餅を食べたい」と言ったときに、支援者から「明日でいい?」とか、「もう80歳だからねえ?」とか言われたら何も言えなくなる。
辻谷 そうでなくて、スタッフが「駒川商店街に丹波屋さんがあっておいしいですよ」と応じれば、「自分が言えば、実現する、外出できる」となる。環境を整備したら、結果的に個人の力も強められる。環境調整によるエンパワメント、個人のエンパワメントを組み合わせると力が発揮できる。
自分が大切にしたいことで生活を変えていく
小八重 ヘルパーと喧嘩してうまく行かないこともあり、資源や制度があっても難しいことがある。ナビは個別ILPを進めているが本当にエンパワメントになっているのかと悩む時がある。通所のエンパワメントの取り組みと、ナビの個別ILPをうまくリンクさせたい。
小坪 Hさんは、長い入院生活の末にグループホームに入居された。お母さんが亡くなったときに、「やっと足かせがとれた」と思ったという話をHさんから聞き言葉の重みを実感した。すぐに一人暮らしを目指すのは、まだハードルが高いと思うので、ヘルパーを使い自分の好きなことをして、リオの生活を満喫してもらいたい。
濱田 今は、お菓子作りで自分のこだわりを曲げたくないという気持ちで、ヘルパーへの指示出しを工夫されている。
辻谷 Hさんは、ゲームとかYouTubeとかアニメとか好きなことにいい意味でこだわりがある。食事は健康を考えて宅配弁当を食べていた。それを変えたら少し元気になった。自分が大切にしているのが何かわかって、それで生活を変えていくことが大切。
小坪 Hさんは、お菓子作りを通してエンパワメントされていると思う。
濱田 ケーキ作りは、妥協をしたら失敗する料理。Hさんが成功したときは本当に喜んでいて、僕も一緒に元気になった。
やりたいことをやる 何かできることを感じてほしい
辻谷 赤おにに来たら、自分の希望を言って、何かできるということを感じてほしい。やりたいことをやるのが一番。一時期、活動メニューがあって、それを選ぶという形に変わったことがあった。本当にやりたいのでなくて、ずっとやっているし、他に何があるのかと惰性になってきた。活動があるからするのでなく、本当はなんでもいい。お菓子作りでも、歌を歌うでも。
濱田 Gさんは、iPadで歌を聞いて、大きな声で歌っている。昔は、歌ったらアカンのかという雰囲気の時もあった。iPadがあるからユーチューブを使える。それは環境調整のエンパワメントで、GさんがiPadを使えるようになったのは、個人のエンパワメント。両方が高めていっている。
先輩障害者が伝えること
堀 障害者って知らず知らずに自分を抑圧している。自信を取り戻したり、私ってこんなことできるんだって自分を解き放てたらいいけど、親とか学校とかいろいろ言われたことを内面化して、「こんなん言ったらアカン」って縛られている。個々人も強くならなアカンけど、「言ってもいいんや」という経験が第一歩ということが話を聞いてわかった。そういう意味では先輩障害者の関わりって大きいと思う。
小坪 Iさんは、昔は階段でも担いでもらうこともたくさん経験していて、若い障害者が「担いで」って言えないところを、Iさんが「階段担いでもらってでも行くで!!」と当然のように言えるから、若い人が「言ってもいいんや」と感じられる。ちゃんと行動できるベテランの障害者の強みをいかに生かせるか、どうアプローチするのか考えるのが大事。
伝えることの試行錯誤
東 Jさんは、リオで一人暮らしが長くて、料理も節約も上手で、やる気に満ち溢れている。学生さんと料理を作ったり、いろいろ工夫したり、やりたいことがどんどん出てきている。若い人に伝えたら、いい刺激になると思う。どう伝えられるのか、アプローチが必要。
辻谷 先輩の障害者が、若い障害者にどう伝えられるのか、どうやったらエンパワメントにつながるか考えたり、試行錯誤したりすることが必要ということを、共有できたらいいなと思う。
小坪 先輩障害者もILPを受けた経験はあるけど、プログラムをイチから考えた経験があるわけでないので、どう組み立てたり、どう関わったらいいか、悩むことも多いと思う。言語障害がある人は、伝えにくい場合もある。ナビの障害者とかスタッフと、どういう方法がいいのか一緒に考えて試行錯誤することが大事。その結果の成功体験が先輩障害者自身のエンパワメントにつながるし、スタッフの意識を高めることになると思う。
欲望の解放 やりたいと思えるには
小八重 欲望の解放はどうやったらできるのか。僕たちは生活の中で我慢し続けいつも遠慮していると思う。障害者はもっと抑圧されている中で、欲望を解放させるのって、何かきかっけがあればできるのか。堀さんは解放できていると思うんだけど。
堀 私が解放できていることはない。まだまだ、やりたくてできてないことはたくさんある。
小坪 きっかけを作らないといけない。力強くないと解放できないのかというとそうでない。
堀 昔は、抑圧に屈して諦めたら、家に居るしかない時代だった。極端に言ったら、野垂れ死ぬかもしれないけど我が道を行くのか、自分の人生を捨てるのかという切羽詰まった感じ。私の場合は、我が道を行ってもいいんやと思える巡り合わせがあった。今の時代は、ほどほど理解ある両親、ほどほどに環境も整備されて、ちょっと我慢したらほどほどの人生が送れるみたいな、それが昔と違うかな。
小坪 僕は、実家から駅まで電動車いすで1時間半かかる。実家からは外出が困難ということが一人暮らしの原動力になった。大阪市内で住んでいると、地下鉄を使えば色んな所に行けるし、制度もまだ不十分な面もあるが、それなりの生活ができる。例えば、実家で生活するのに体力的にキツイお風呂だけヘルパーを使うこともできる。よく、自立生活をしている友人と話すが、実家はある意味、全自動の生活。例えば洗濯機に服を入れておくと何も言わなくても、洗濯→干す→取り入れ→畳まれて収納場所に戻っている場合が多い。そうという恵まれた環境にいると、一人暮らしをすることの方がしんどい。ふんぎる理由が要る。
東 ナビに入ったときに、早く自立してねって言われたけど、最初はなんで障害者だけそんなん言われるのかと思った。実家でも好き勝手にしていたから何も困らなかったし、自立するために、何か理由が要ると悩んだ時期があった。「好きなことをしたいです」では、理由としては弱かった。
小坪 CILのスタッフが自立していないのは話にならないからね。
エンパワメントへの理解を深める取り組み
辰巳 エンパワメントという言葉は好き。「自立はちょっとね」と思っている親も、自分の子供が元気になるというのは受け入れやすい。パートヘルパーも含めてみんなに考えてもらいやすい。
濱田 でも、エンパワメントは言葉だけだとわかりにくい。事例をしゃべろうという取り組みをしている。良かった事例とか、悪い関わり方とか、違和感ワードとか出し合っている。
辻谷 1月のパートヘルパーミーティングは「仕事のやりがいとパワフルエピソード」をテーマに研修した。みんなに共通するのは、障害者が元気になった経験やエピソードを共有したら、ヘルパーも元気になるということ。元気になるパターンを共有し環境を調整していく。
小坪 皆さんは日々どんなときにやりがいを感じますか?
小八重 いまK君が一人暮らししたい理由をお母さんに伝えるために動画を作っている。自分がしたいことが全部書いてあって、文章がとてもよかった。本当の気持ちだなと思って、一緒に考えていて、嬉しかった。言いたいことを言える力を重ねるのは大事だと思う。通所のエピソードは?
辻谷 いっぱいあるけど、ひとつだけ。Aさんは6年前まで、家にヘルパーが来ているだけで、通所は利用しなかった。脳性麻痺で言語障害があって、かつ聴覚障害がある彼にとっては、情報保障がなければ会話に参加できなかった。スタッフが指文字だけでも覚えてコミュニケーションを取り出したら来るようになった。そういう環境が必要だった。
障害者スタッフにとってのエンパワメント
松倉 私は、Lさんが文字盤を作ってくれて、毎日、私と話をしてくれるようになったことが嬉しい。もともと、言語障害があるBさんの言葉を聴覚障害の私が分かるために文字盤を使っていたが、それをLさんが見て、自分用を作ってくれた。さらに、それを見ていたM君も作ってくれたのが重ねて嬉しかった。
聴覚障害の私もだけど、コミュニケーションに時間がかかる人は、話そうと思って時間を取らないと話せない。Bさんと文字盤で話をして、時間がかかったけど、とても深い経験を聞けて、私も自信になったし、Bさんも笑顔やったから、お互いにエンパワメントになったと思う。
小坪 成功体験を積み重ねて、エンパワメントしていっているのですね。
小八重 ILPを担当する職員も元気になりたいと思った。
堀 エンパワメントはお互いに元気になるんや!ということが感じられた。とても今日は良かった。障害者職員としてのエンパワメントも大事だと思った。社会モデルでとらえ、一緒に何ができるか共有しながら生活するのって難しこと。一緒に考えようっていうのもエネルギーが要る。そして、若い障害者にとっても、先輩の障害者にとっても、支援者にとっても、みんなにとってもエンパワメントは共通の課題だと思う。
本日はありがとうございました。
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