- ちゅうぶの日常
- 2020.05.04 (月)
- [ 相談支援/ナビ ]
今を大切に。
4月の終わりの週末に、2週間ぶりに梅田の地下街を歩いた。義父が危篤になり、急遽新幹線で向かう事になったのだ。緊急事態宣言が出されてから会うこともやめていた他府県に住む娘と新大阪で合流。久しぶりに見た梅田の地下街、新大阪駅の異様な様子に唖然とした。まるでSF映画を見ているかのような感覚。これが、コロナウイルスによる移動自粛の現実。店と言う店が閉まり、食べ物はコンビニかマクドしか空いてない。ガラガラの自由席にのり、これまた土産物屋が全て閉まっている駅でおりた。
幸い義父は、コロナが原因ではなく、苦しむこともなく94歳の大往生だったが、コロナ感染の危険性を考えて、親戚の参列は遠慮してもらうことにした。しかし、家族に囲まれ、納棺師の手でとても丁寧で愛情一杯に身支度を整える事ができた。一方でコロナで亡くなった方は、家族に見送ってもらうこともできずに荼毘にふされてしまう事を思うと、胸が痛む。
こんな時代が来るなんて、60年生きてきて想像もしなかった。コロナウイルスが忍び寄る今、未だ現実感がなく、不安と焦りだけが募っていく中で、私たちはどう生きていくかが問われている。
海外旅行から帰ってきた学生が原因でその後クラスターが起こったため、大学に対して非難や中傷の電話やメールが殺到し、中には脅迫めいた電話もあったという。クラスターが発生した福祉施設では、利用者や職員にとどまらず、家族に対してまでひどい誹謗中傷や心無い態度が浴びせられた。休業要請に応じないパチンコ店に並ぶ客に対して、怒号が飛ぶ。私たちのために命懸けで戦ってくれている医療従事者に対してまで、中傷・差別しようとする。そのような人権侵害にまで至る例が数多く報告されている。誰のせいでもないのに感染して苦しい思いをしている人や対応に追われる人たちに、協力するどころかつぶしにかかるのは、恐怖で理性を失っているとしか思えない。
さらに最近になって、県外ナンバーの車に誹謗中傷を浴びせたり、投石やあおり運転が頻発したり、居酒屋や飲食店に、営業を自粛しろと書いた紙が張られることが起こっている。思わず魔女狩りや戦時中の特高や隣組を連想してしまった。上からの半強制的な自粛要請の下、自分達のストレスを正義感を振りかざして他者にぶつけているとしか思えない行動。ああこんな風に、人々は分断され、何も言えなくされていくのだとおもった。戦争が始まったらこうなるのか。それぞれの人が自分の良識と判断で行動できなくさせられる社会が本当に迫ってきている怖さを感じた。
けれど、かくいう自分自身も、身近に感染者が出たら、パニックにならないという自信はない。誹謗中傷はしなくても、冷静な言動がどこまでできるのかと思う。不安定でぶれぶれなちっぽけな自分に嫌というほど気づかされる。
そんな中で、WEBニュースで発言していたお二人の言葉が、とても愛に溢れていて、心に染みた。医師で作家である鎌田みのるさんと、絵本作家の五味太郎さんである。鎌田さんは、いま大切なのは、無自覚のままウイルスを広げている若者にバッシングではなく、協力を求めることだと、警鐘をならしている。
「バッシングは、他者を非難する事で、自らの恐れやストレスから逃れようとしているせい。頭ごなしに自粛への協力を強制するのではなく、悩みをきちんと受け止める努力をし、一緒に考え、助ける方法の提示や補償をすれば、罰則がなくても皆が協力してくれる。
感染した人に厳しい社会は、感染症に弱い社会。感染した軽症者には、居心地の良い場所で滞在してもらい、周囲は感染者に対して、常に、ご苦労様と言う姿勢で望むことが大切。そうすれば、退院した暁には、地域のために協力し、頑張ろうと言う気持ちになってくれるだろう。抗体ができた人には、感染の危険性が低下し、コロナ禍の第2波、第3波が来たときに、医療を担ったり物資を運んだりする先遣隊になってもらわないといけない。パワーを持った仲間がいると考える事ができる。
一方で、若い医師や研修医が会食して感染して批判を浴びた。感染拡大を招くと言われる行動をした者には反省してもらわないといけない。しかし、駄目なやつだとレッテルをはるだけで終わったり、突き放したりしないことが大切だ。抗体ができていれば、これからの医療現場で力になるからだ。もし、私が彼らの先輩だったら、笑って、バカやろうと言い、これから頼りにしているよと、声をかけるでしょう。」
五味太郎さんは、「早く元に戻ればいいって言われがちだけど、じゃあコロナの前は本当に充実してたの?と問うてみたい。働き方も国会も学校も、色んな事の本質が露呈しちゃってる。五輪の延期も、オリンピックより人の命って大事なんだなとやっと再確認したんだろうし、優先順位がはっきりしてくる。心っていう漢字って、パラパラしてていいと思わない?先人の感性はキュートだな。心は乱れて当たり前。常に揺れ動いて変わる。不安定だからこそよく考える。もっと言えば、不安とか不安定こそが生きてるってことじゃないかな。」と語っている。
国の新型インフルエンザ等対策有識者会議の委員を務めた川本哲郎・同志社大元教授は、「特措法は店名公表や休業指示に制裁的効果があるのに、補償がなく建て付けが悪い。補償が無いためやむなく営業する事業者もいるはず。全額でなくても8割補償など、柔軟に考えるべきだ。法の運用にも問題がある。店名公表の際に制裁的な色合いを薄めるため、本来は要請した全施設を公表するはずなのに、従わない施設だけを公表した。『言うことを聞かない店』というメッセージになり威圧的、制裁的だ。店に非難が集中し、社会的制裁を招いた。『緊急』という言葉のもとに、法の本質が押し流されてしまっていると感じる。」と、語っている。
一方スウェーデンのように、行動制限や封鎖ではなく、国民一人一人の自主性を重視する国がある。首相は、「私たち大人はまさに大人でなくてはならない。全員が人としての責任を果たすはず」と発言し、国民自ら在宅勤務をし、高齢者への接触や大人数の集会を避ければ、規制がなくとも感染拡大は防げるとしている。子供たちは通学し、外出制限も店舗の休業もない。集団免疫の獲得の道を選んでいる。
果たしてその対策が成功したのか失敗したのかは、まだわからないし、不安を訴えている人もいるようだが、要請や脅しではなく、一人一人が自主的に判断して責任をもつというのは、なんという日本との違いだろうか。きっとスウェーデンでは万一対策が失敗しても、次は国民が納得して一丸となって協力することだろう。
暗い話ばかりではない.医療従事者にエールを送ったり、いろいろな寄付があったり、自分ができることを発信している人たちもたくさんいる。まだまだ日本も捨てたものではない。自分に何かできることはないかと心ばかりがあせって動けない私だが、不安を共有しつつ、今ある自分の役割をしっかりと行い、自分がうつることもうつすこともないよう、自分の責任を果たすことが大事だと悟った。そして、コロナか事故か突然死かわからないが、人はだれでもいつ死ぬかわからないということを真正面から受け止め、今を大切に生きていこうと思う。
ナビ 西川
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