突然の車いす生活③
こんにちは。自立生活センター・ナビの中尾です。前回に引き続き、車いす生活中につけていたメモをちらっと公開してみます。「歩けなくても車いすがあるよ」というのは障害者や高齢者でないと、なかなか思いつけないところではありますが、もし自転車と同じような感覚で車いすを使うようになったなら、また社会の在り様も変わってくるのではないかなと思います。
<5日目:初の車いす>
ポツポツ小雨が降っている。カッパを着て松葉杖をつこうとするが2m程でギブアップ、全然前に進まないのでタクシーを呼ぶことにする。通勤にどれだけ時間がかかるか見当がつかず、その時は朝6時過ぎ、5分程度で来てくれた。タクシーの運転手さんは、以前介護タクシーを運転していた経験があるそうで、話を聞いてみる。簡易電動によっては、普通のタクシーには乗らないかもしれないこと、タクシー業界も高齢化しているので車いすが重かったら嫌がる運転手がいるかもしれない、等の情報を聞く。
昼過ぎ、ユーダさんより車いすが到着。すべてのオーダーを叶えてもらった。私専用の乗り物を手に入れてテンションが上がる。ナビの車いす先輩方々からは、電動の操作法や車いすのあるある話等、色々教えてもらう。
いよいよ車いすでの帰宅、屋外を走るのは初めて。いつもは気にも留めない駒九橋の急な坂が登れるのかが不安になり、見守ってもらって無事に通過する。初回のハードルを超えた。車が通ったり、自転車が近づいて来たりするたびにヒヤヒヤして何度も止まりながら田辺駅までたどり着く。無言で通っていた改札も、今日からは行き先を告げなければスロープを出してもらえない。いつもは谷町線から御堂筋線へは梅田で乗り換えていたが、人混みが怖くて天王寺乗換に変更する。
天王寺駅構内にもいくつか坂があり、そのたびに体が傾いてスリルを味わう。たまたま時間帯がよかったのか、恐れていた人混みは、それほどでもなかった。車いすの私を見れば、基本場所を空けようとしてくれる。気をつけないといけないのは、スマホに夢中で車いすに気づかない人。ちゃんと前を向いて歩いてください!危ないよ!
なんだかんだありながら地下鉄乗車という本日の最終最大のハードルを乗り越えた。安心するとまたちょっと冒険してみたくなり、バリアフリーなのを知っている近所のローソンに行って勝利のデザートを買った。長い1日が終わった。
(つづく)
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