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  • 2020.12.05 (土)
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学校のバリアフリー整備計画の策定を働きかけよう

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DPI日本会議・副議長/NPOちゅうぶ代表理事 尾上浩二

国バリアフリー法で学校バリアフリー義務づけ

 今年5月に国のバリアフリー法が改正されました。前回2018年から2年ぶりとなる今改正の目玉は、学校のバリアフリー化の義務づけです。

 学校のバリアフリーは長年積み残されてきた課題です。建物のバリアフリーに関する法律は、ハートビル法制定の1994年までさかのぼります。それから26年目にして、ようやく国の法律で学校のバリアフリーが義務づけられるようになったのです。

 私たちが住む大阪のまちづくりの中でも、学校のバリアフリーは大きな課題でした。

 1992年に大阪府は全国に先駆けて「福祉のまちづくり条例」を制定します。しかし、特別支援学校はバリアフリー義務づけの対象になったものの、地域の小中学校などは努力義務にとどまりました。

 私は、当時、大阪府の条例制定運動の中心にいましたが、とても悔しい思いをしました。それで、翌年につくられた大阪市の要綱(ひとにやさしいまちづくり要綱)をつくる時は何としても学校のバリアフリーの義務づけを実現しようと、夜23時くらいまで粘ったことを思い出します。大阪市の担当者も頑張って教育委員会などと調整して、地域の学校もバリアフリー義務づけの対象になりました。特に、小中学校のほとんどは大阪市立のため、自らつくった要綱を守る趣旨から大阪市内の学校にはエレベーターをはじめバリアフリー設備が整えられるようになりました。今年3月に衆議院の国土交通委員会で行われた参考人質疑に私も呼ばれ意見を述べましたが、大阪市内の小中学校の96%はエレベーターが設置されていることを紹介したところ、そのことを聴いた国会議員は驚いていました。

 大阪府条例も、1995年の阪神淡路大震災で、避難所になる学校の体育館が段差だらけで避難できない状況にあることが明らかになり、2002年に見直されて学校のバリアフリーが義務づけられました。

 21世紀に入ってからは、「学校のバリアフリーはそれなりに進んできているだろう」と思っていましたが、2011年の東日本大震災で全然違う状況にあることが分かりました。

 東日本大震災から10日後くらいに、障害者救援本部の立ち上げのために現地入りすることがありました。その時に、救援物資も届けようと車に積んで持っていきました。ところが、避難所になっている小学校に行ったら、入り口に5段ほどの段差がありました。現地は避難生活で大変な状況だったこともあり、電動車いすで入るのはあきらめ救援物資は他のスタッフに持っていってもらうことになりました。

 当時、住んでいた東京でも同じようなものでした。電動車いすを使っている友人は、交通機関が止まり帰宅できず小学校の体育館に避難したところ、入り口に段差があり担ぎ上げてもらって入ったが、その後、トイレにも行けず苦労したと言っていました。

 国の法律で学校のバリアフリーが義務づけられていなかったため、とても大きな地域間格差が生じていました。そうした格差を無くして、全国的に学校のバリアフリー化を進めるという点で、今回の改正はとても大きな意味を持つものです。学校のバリアフリー化が進むことで、「設備が不十分だから」といった理由からの入学拒否はなくなり、インクルーシブ教育を前進させていく環境ができます。また、最近、日常化している地震や台風などの時も、家の近くの学校が避難所として大きな役割を果たします。

■鍵は市町村教育委員会のバリアフリー整備計画

   〜国の整備目標と連動させて〜

 このようにバリアフリー法の中で学校バリアフリーが義務づけられたことは意義あることですが、一方で課題もあります。

 一つは、学校の多くを占める既存物も含めたバリアフリー化をどう進めるかということです。バリアフリー法は新築や大規模改修の場合は義務づけになりますが、既にある建物(既存物)は努力義務になります。少子化の今、新設の学校は少なく、ほとんどが既存物となります。この既存の学校をバリアフリー化していくためには、学校を設置している教育委員会がバリアフリー整備計画をつくって進めていくことが不可欠です。

 もう一つは、公立の小中学校以外の幼稚園や高校、大学、そして私学の学校のバリアフリー化です。こちらは、大阪府のまちづくり条例が関係してきます。

 ここで、一つ目の公立の小中学校のバリアフリー現状を見てみましょう。

 情報公開で入手した「学校施設のバリアフリー化に関する実態調査結果」では、今年5月1日現在の市町村ごとの小中学校のバリアフリー状況が伺えます。

 最近、頻発する水害で三階以上への避難勧告が増えてきました。上階への移動に不可欠なエレベーターの整備状況を見ると、100%から0%まで、とても大きな差になっています。

 また、バリアフリー計画を持っている市町村は43市町村中12にとどまっています。大阪市もエレベーター整備自体は進んでいますが、計画は「無し」と回答しています。そして、計画を持っていない31の内、計画策定予定が有ると答えたところは富田林市だけです。つまり、今年5月段階では、大阪府下の7割の市町村が計画もなく、策定予定もないと答えているのです。

 さらに、計画が有るところでも、例えば枚方市はエレベーター整備率は11%にとどまっています。多くの自治体では避難所として使われる体育館などのスロープ設置などが中心だったのではないかと思われます。ぜひ、「みんなの学校」となるように全ての校舎を対象にしたバリアフリー計画が求められます。計画を既に持っているところも、この機会に見直していく必要があるでしょう。

 市町村のバリアフリー整備計画を後押しする国の動きも始まりました。

 今年7月に文部科学省は学校バリアフリー化に関する検討会(「学校施設のバリアフリー化等の推進に関する調査研究協力者会議)を設置して、バリアフリー化を進めていくための検討をしています。

 9月に出された「緊急提言」は、けっこう力強い内容になっています。障害者団体からの意見も取り入れて、「国として、2025年までの5年間に緊急かつ集中的に整備を行うための整備目標を設定する」と明記し、今後5年間に「緊急かつ集中的」に整備が進むような目標を設定するとしています。また、そのために、国のバリアフリーの補助制度も充実させることも明らかにしています。

 その上で、市町村教育委員会などに対して、「今後国が設定する整備目標も踏まえ、バリアフリー化に関する整備目標を設定すること」を求めるととともに、「新増改築時のバリアフリー基準の適合はもとより、既存施設のバリアフリー化に関する整備を着実に行うこと」と既存物も含めたバリアフリー化を行うことを提言しているのです。

 こうした「緊急提言」なども追い風に、各市町村の教育委員会で学校バリアフリー整備計画がつくられるように、働きかけていきましょう!

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