Home  日々の活動  トランプ政権下の障害者を取り巻く現実

トランプ政権下の障害者を取り巻く現実

 DPI日本会議の研修として、NPOちゅうぶの職員会議で「アメリカから見えるトランプ政権下の障害者を取り巻く現実」と題してノアさんから講演いただきました。とても衝撃的な内容で、対岸の火事ではすまされない問題ですので、概要を報告します。(堀)

National ADAPTとは何か

私は、シカゴアダプトの代表を2019年から、イリノイ州立自立生活連絡協議会の副代表、それと、自分が立ち上げた介護派遣の団体の取り組みをしています。
ナショナル・アダプトというのは、障害者の権利とコミュニティで暮らす自立と自由を守るための全米の草の根団体です。デモや選挙、座り込みなどの非暴力・直接行動で制度差別に対して立ち向かってきました。

バスに乗る権利があるんだ!!

その始まりは、1978年です。19名の障害者が脱施設で地域に出てきたわけですが、車社会のアメリカではバスに乗れないとどこにも行けない。自分達にはバスに乗る権利があるんだと叫びながら、バスの下敷きになって寝ころぶ、車椅子をバスの前の真ん中に置いて動かないなどの闘いを展開し、ADA(アメリカ障害者法)ができる前に制度を整える最初の動きをしました。

有名な9歳の女の子が階段を這いつくばって上がる様子、こんな小さな子がADAを通すんだと訴えた姿が大きな力になったのですが、この人たちはみんなアダプトの人たちです。
CILの運動はどちらかというとアダプトとは全く異なる知的な運動です。地域で議員さんに粘り強く訴えるという活動などをしてきました。
そして、大きな流れをまとめる力を持つジャスティン・ダートさんのような人が国の議会に直接訴える役割を担う。この3つが大きくかみ合って、ADAが通ったわけです。

100回以上逮捕されたアニータさん

ADA以降は、施設からの解放、地域生活をするための保障、自由に生きられる社会を目指して体を張り続けています。 私も6回以上逮捕されました。写真のアニータさんは御年80歳、有名な黒人活動家で100回以上逮捕されています。彼女の言葉を忘れません。

「なぜ私たちがそこにいるのか。あなたは悔しい思いをした。障害のない友人たちは正面からレストランに入れるのに、あなたは車いすという理由で、裏路地から、そして厨房を通って入らなければならなかった。あなたは苛立ちを感じた。市議会の会議で何が話されているのか全く分からなかった。なぜなら、手話通訳が用意されていなかったからだ。あなたは怒りを覚えた。 自分の自閉症のチックが原因で、警察に逮捕されたとき。そして、他の人たちがどれほどひどい扱いを受けているかを知るにつれ、その怒りはさらに強くなる。あなたの友人の家族は、友人のパーソナル・アテンダントを見つけることができず、友人は家に居続けることができずに施設で亡くなった。最後に面会に行ったとき、ロビーは良い匂いがしたが、奥に入ると、尿と排泄物のにおいが充満し、かすかな消毒剤の匂いがそれをさらに際立たせていた。何万人もの人がこのような環境で暮らし、そしてそこで亡くなっている。あなたがそこにいる理由は、彼らのため。自分自身のため。あなたのコミュニティのため。私たちの命には価値があり、私たちは正義を求めるからだ。」

トランプの1つの大きく美しい法案 障害者低所得者支援の停止・削減

トランプ政権下の障害者にとって問題となる法案ですが、OBBBA(One Big Beautiful Bill Act(1つの大きく美しい法案)という意味で、メディケイド、フードスタンプ、障害者年金、セクション8(住宅支援)、生活保護費など、障害者や低所得者の生活を支えている支援の大きな削減を含んでいます。

アメリカの生活保護費は1か月4~5万円ぐらい、セッション8という住宅支援は家賃を3割で済むように支援する施策、障害者年金も4~5万ぐらい、あと、フードスタンプが3万円分ぐらい、食事の材料が購入できる。ただし、お酒とか調理済みのサンドウィッチなんかは買えません。それにメディケイドで0~1割負担で医療を受けられる。これで、だいたい暮らせるようになっていました。

障害者支援制度の新規受付・更新停止

2025年に法案が通ったので、2026年から新規の制度申し込みが停止されました。新規利用の待機者は71万人以上います。親から自立したい人、施設から出たい人が何年も待機待ちしています。待機者の73%は知的発達障害の人です。

トランプは知的障害者に対して何度も「生産性の低い人」と発言しています。生産性の低い人のためになんで俺たちの金が使われるんだという発想だと思います。お金持ちの税金を軽減するために、障害者が生きるために不可欠な経費を削減する「美しい法律」は優生思想そのものだと感じます。また、制度適用中の人も、更新停止になるので、2026年~2028年の間で、使えない人がどんどん出てくる状況です。 施設から出ることができないし、地域で生きてきた人も施設に戻るしかない状況です。

法律は通ったけど、詳細や予算はまだ決まってない部分があるので、少しでもダメージを軽減できるように交渉をしています。これは、シカゴアダプトの闘いです。議会に乗り込んで、カットは障害者の人生と自由に対する妨害だと訴えるわけです。逮捕されて追い出されそうになっている場面です。

ヘルパー派遣制度、教育、就労にも影響が

低所得の障害者だけでなく、もっと、影響は広範囲です。 私が使っている介護派遣制度もメディケイドの予定をつかっていますので、介助者予算をカットされて使うことができなくなります。

また、特別支援教育とか、通常学級でみんなと一緒に教育を受けるための介助者の予算もメディケイドです。地域移行経費、学校教育、大学への助成、それらもメディケイド関連が結構ありますので、そこが奪われると、教育を受ける権利、就労の権利、地域参加の権利が制限されます。今の状況はまさに地域で生きる障害者にとっては、戦闘モードにならざるを得ません。

IDEA法(障害をもつ子どもの教育法)、メディケイド削減による教育支援の危機

IDEA法は、知的・発達障害児の早期医療・早期療育、特別支援に関するもので、3歳~18歳の間、無償で提供されます。例えば、普通教育の中で、手話や点字を学んだり、介助とか、学ぶときについていけるように支援したり、同じ教室に個々のニーズに合わせて教えたり、それがすべてメディケイドの予算で行われています。理学療法士、作業療法士、精神療法士、コミュニケーション用のiPadなども全部無料でした。予算が削減されることで、これらを保護者が負担しないといけなくなります。インクルーシブ教育ができなくなっていくのではないか、人権に大きく関わると感じています。

Affordable Care Act(医療保険制度改革/オバマケア)の予算削減 2026年障害者が次々亡くなるのでないか

オバマケアは、何百万人の医療保険へのアクセスを広げた重要な法律ですが、トランプによる大幅な予算削減によって深刻な危機に直面しています。働いて収入があるとメディケイドには入れない。しかし、既往歴があると健康保険に入れないという問題がありました。オバマケアでは、メディケイドの枠を広げて、メディケイドに残れるようにしたり、既往歴があっても健康保険に入れるようにしたり、いろんな改革が行われました。

また、会社の健康保険でカバーできない特別治療などへの援助の仕組みなどもオバマケアにはありました。オバマケアがないと、障害者が必要な医療ケアが受けられなくなります。トランプ政権下で大きく揺らぎ、崩れてきています。保険に入れない。病院に行けない。だから、死ぬしかないという人がたくさん出てくるというのが目に見えています。2026年は障害者が次々に亡くなるだろうと思います。

政府機関・行政機関の予算と人員の削減

トランプが突然、明日から政府機関の予算を大幅にカットしますみたいなSNS発信をして、私が働いているテキサス州オースティン市へも人事部へすぐに人員と予算のカットの指令がきました。障害者支援の仕事は、長年の経験や知識や人との繋がりによって、円滑に行われるものなのに、ブツっと切られている。そのサービスの窓口の人が居なくなるということは、サービスを受けに来た人の対応が遅れを取るわけです。 親元や施設から地域移行したい人が71万人いて、3年待ち、5年待ちの待機をしているのに、政府機関の窓口の人も、予算もカットされたら、もっともっと待たされて、権利侵害や虐待など人々の命に関わることもあるわけです。

CILや非営利団体の予算の削減

2025年度から、全国のCILや障害者の生活を支える非営利活動のための予算がほぼゼロにされて、多くの団体がサービスを行うための資金集めがメインの仕事になっている現実があります。 私は、自立生活連絡協議会というCILが円滑に適正にサービスをおこなっているか知事に報告をするボランティアみたいなこともしているのですが、多くのCILが必要なサービスの提供ができなくて、このままだと閉めるしかないというのを目のあたりにしています。国が出さないなら、州で支援してくれと働きかけています。本当にいろんなところから削ぎ取られて、毎日、新しい事件が起きていて、2025年は闘い続けた1年だったと思います。

介助者の9割は移民労働者!強制送還が怖くて介助のために外出できない

アメリカでは、介助者を支える多くの労働者が移民で成り立っています。シカゴでは介助者の93%が移民労働者です。介助者の賃金は1時間2000円で最低賃金ギリギリの底辺です。トランプは、ヒスパニック系とかアジアの人など、逮捕しまくっています。正式ルートで入国して、正規のアメリカで働く権利がある人もお構いなく、アメリカで生まれてなかったら、移民やんという感じで、武装された警官に突然逮捕されて強制送還されている。道を歩いているだけで逮捕される状態なので、介助にも行けない。介助者不足で施設に入らないといけない状態も起きています。

                                                                          移民って、すぐ隣にいる人で、学校の友達のお母さんが連れ去られていくという光景を見ると、人々は本当に怒りを感じています。反発するシカゴにはトランプは軍隊を送ってきました。抗議デモをする人たちにタックルをして、当たれば骨折するぐらい威力があるゴム鉄砲を向けてきます。

たくさんの人と共に立ち上る これからも頑張ろう!!

メディケイドや移民問題など、障害者問題だけでなく、低所得者、黒人、ヒスパニック系コミュニティ、移民、難民、高齢者、障害者、LGBTQ、シングルマザー、慢性疾患がある人々など、様々なマイノリティ団体に訴えることによって、大きな運動にしていこうとしています。 

トランプ大統領への不満が高まって、独裁政治みたいなキングはいらない、ノーキング!! 憎しみはアメリカを素晴らしいものにしない!!と訴えています。障害者だけでは何もできないけど、たくさんの人とつながることがパワーになっています。 大統領は替えられないけど、賛同する政治家は追い出すことはできると、人々は次々に立ち上っています。

       

公共財団法人JKA 補助事業完了のお知らせ CYCLE JKA Social Action